海外在住者が語る異文化理解⑥ イタリア編

本シリーズ「海外在住者が語る異文化理解」では、海外で暮らす中で考え方や習慣など文化の違いを感じた経験をお持ちの方にお話を伺い、毎回読み切り形式でお届けします。

※プライバシー保護のため一部内容を変えております。

 

<第6回>

お話を伺った方:Tさん(学生/20代/男性)

 

– 印象に残っている出来事を教えてください。

イタリアに留学していたときのことです。

留学先のクラスメイトは、初対面の私にたくさん話しかけてくれて、食事や遊びにも誘ってくれる気さくな人たちでした。

毎週のようにパーティーや小旅行を企画して遊んでいるような、とても仲の良いクラスに入れて幸運だったと思います。

おかげで彼らと早く打ち解けられて、寂しいと思う暇もありませんでしたから。

ただ、誘われる頻度が高くて、毎回参加しているとひとりの時間をつくることが難しくなってしまったんです。

ひとりの時間も欲しいなと思うようになり、徐々に誘いを断るようになりました。

その結果、仲良くしていた友人の輪に入りづらくなってしまって……。

「付き合いが悪い奴」と思われていたかもしれません。

 

– 当時のお気持ちと、どのように対応したか教えてください。

異なる文化の中で育った人と毎日接する以上、コミュニケーションの問題は起こるだろうし、価値観の相違によって軋轢が生じる場面もあるかもしれないと予想はしていました。

せっかく仲良くなった友人との繋がりが薄れてしまうことは寂しいけれど、ある程度は仕方ないと納得しました。

でも、日本にいる家族の協力があって留学している以上、現地の人たちと積極的に交流していろいろ学ばなくちゃ……いう気持ちもあって、悩んでいましたね。

ここで孤立するような状況は避けたいし、自分の性格に原因があるのならば直さないといけない、と焦りを抱えていました。

そのうち、「郷に入っては郷に従え」という言葉の通り、外国人の立場である自分が何かを変えないといけないんだろうな、と考えるようになりました。

自分から他愛のない話題を振るなど、少しずつですがクラスメイトとの関係性を取り戻す努力をしたところ、また自然に一緒にいられるようになったんです。

 

– 当時を振り返って、現在のお気持ちを教えてください。

私は活発とはいえない性格ですし、集団行動が苦手で、ひとりで過ごせる静かな時間が必要でした。

自分に合わないことを無理に続けてもつらくなってしまうので、クラスメイトと一時的に距離を置いたことは後悔していません。

でも、何度も誘ってくれた友人に対して「また今度」とそっけなく断るのではなく、「今日は家でゆっくりしたいんだ」と自分の気持ちを正直に伝えても良かったのかもしれません。

当時は誘ってくれた友人の気持ちまで考えられなかったのですが、何度も断られたら誘いたくなくなりますよね。

もしかしたら、嫌な思いをさせていたかもしれない。

友人と互いに尊重できる関係性を築きたいなら、要所で自分の考えを伝えることや、相手を気遣う一言が必要だなと今は思いますね。

 

– 当時、周囲の方々はどのような反応でしたか。

私が誘いを断るようになって離れてしまった友人もいれば、「リラックスする時間も大事だよね」とフォローしてくれた友人もいました。

理解してくれる友人がひとりでもいると、安心しますよね。

留学先の学校には日本人の先生も在籍していて、日本語を学んでいるイタリア人の学生を紹介してくださるなど、手厚いサポートも受けられました。

ひとりの時間が必要とはいえ、外国語や文化を学ぶために大学や地元の人たちと交流を深めたい気持ちはあったので、とても助かりました。

異国の地で、自力でネットワークを広げることは難しそう……と不安だったときに相談できて、心強かったです。

それまで悩みを自分だけで抱え込んでしまうことが多かったのですが、誰かに相談したり助けを求めたりしても良いのだなと思えるきっかけになりました。

嫌な顔せずサポートしてくれて、本当に感謝しています。

 

– 新しい環境で「頑張らなくちゃ」と意気込んで挑戦する傍ら、やはり自分のペースも大切にしたいですよね。お話を聞かせていただき、ありがとうございました。