海外在住者が語る異文化理解⑤ ニュージーランド編

本シリーズ「海外在住者が語る異文化理解」では、海外で暮らす中で考え方や習慣など文化の違いを感じた経験をお持ちの方にお話を伺い、毎回読み切り形式でお届けします。

※プライバシー保護のため一部内容を変えております。

 

<第5回>

お話を伺った方:Cさん(学生/20代/女性)

 

– 印象に残っている出来事を教えてください。

ニュージーランド南島、クライストチャーチ周辺の小さな町にある高校に留学していた頃のことです。

ある日、日本人留学生の友達と2人で下校中、同じ高校の学生と大学生らしき男の子たち数人を乗せた車が通りがかりました。

すると突然、アジア人を差別する言葉を投げかけられたんです。

車はすぐに去って行きましたが、あまりにも唐突な出来事で驚きました。

私たちが車の通行の邪魔になっていたわけでもなかったので……。

 

– 当時のお気持ちと、どのように対応したか教えてください。

16歳までは日本に住んでいて人種差別を受けたことがなかったので、びっくりしたしショックでしたね。

日本を離れたらアジア人というだけで嫌な目に合うことがあるんだ、と思い知らされました。

悔しいし、悲しいし、腹立たしいし……ネガティブな感情が一気に溢れ出る感覚というか……。

帰宅してすぐにホストマザーに相談し、翌日には高校の先生に伝えました。

車に乗っていた学生を知っていたこともあり、学校側で迅速に対処してくれましたよ。

数日後、その生徒から謝罪の手紙を受け取りました。

 

– 当時を振り返って、現在のお気持ちを教えてください。

当時、といっても10年以上前のことですが、留学先の田舎町はアジア人が少なくて差別はたしかにありました。

現在は少しずつ変わってきていると聞きます。

人種が違うという理由で攻撃されることがある、と実体験によって理解し、10代のうちから「自分の身は自分で守らなければ!」と強く意識して生活するようになりました。

自分がアジア人であることには変わりないですが、身を守るためにできることはありますから。

初めて行くエリアは事前に治安など調べておく、治安が悪ければ近づかない、夜間に外出するなら現地人の友人と一緒に行動するなど。

嫌な思いはしましたが、日本で生活していたときよりも格段に危機意識は高まったと思います。

 

– 当時、周囲の方々はどのような反応でしたか。

留学2年目には英語を理解できるようになり、現地の友達グループに入れてもらえるなど、楽しいことばかりでしたよ。

こちらが一通り会話できるようになると、クラスメイトなどからの差別はほぼなくなりましたし。

ホストファミリーやその友人たち、仲良くなったクラスメイトや先生方がサポートし続けてくれたことも大きいです。

差別発言を受けて悲しかったときも、「あなたは悪くない」と言い続けてくれました。

常に誰かが私のことを理解しようとしてくれて、励ましてくれる環境でした。

今思うと、本当に恵まれていましたね!

 

– 自分にはどうしようもない理由で差別を受けたら、つらく悲しいですよね。悔しさや怒りなど、様々な感情が渦巻いたことと思います。そのような状況で、常に支えてくれた周囲の方々への感謝や親しみも伝わってきました。お話を聞かせていただき、ありがとうございました。