
秋風が吹く頃となりました。
本コラムシリーズ「オランダの窓、働き方と育て方の小話」では、当社オランダ拠点が収集している欧州の教育や働き方に関する情報の中から、コラム担当がピックアップしたトピックをご紹介していきます。
<第3回>
9月も終わりに近づき、上半期の評価が行われたり、下半期の取組みに向けて準備したりする時期ですね。ビジネスパーソンにとって、働き方や生活リズムを意識する機会が増えるかもしれません。
オランダの街では17時から17時半の間にオフィスが一斉に閉まり、街のお店もほぼ同時に閉店します。同僚と仕事終わりの1杯を楽しむ人々も、あまり遅くならないようサクッと切り上げて帰宅します(もちろん大きなプロジェクトの打ち上げなど、例外もありますが)。子育ては夫婦間で働き方を調整しながら、協力して行っている家庭が多いです。保育園に子どもを週5日預けることはほとんどなく、夫婦ともに週4日勤務で平日1日ずつ子どもの世話をするスタイルも一般的。これなら、働きざかりのパパママも親子の時間を確保しやすいですね。近くに祖父母が住んでいれば、曜日を決めて祖父母に預ける場合もあります。休暇や週末の予定は、子どもが大きくても家族優先が基本。そして休暇が終わると、次の旅行の計画を立てるなど、休暇を楽しみに日々の生活を送っているのです。
こうした生活リズムは、オランダがビジネスパーソンのメンタルヘルスや、生活の満足度において世界最高水準であることにつながっています。職場でも、柔軟な勤務制度や有給取得の奨励、心理的安全性を重視したチーム運営、カウンセラーやコーチの活用など、心身の健康を支える取り組みが進んでいます。
例えば、あるIT企業では、社員が勤務時間を柔軟に設定できる制度と並行して、業務負荷やメンタルのコンディションチェックを定期的に行う仕組みを導入。従業員は自分の生活リズムに合わせながら効率的に働き、家族や趣味の時間も大切にできます。また、ある製造業の現場では、チーム単位で休暇や勤務時間を調整し、互いの家庭やプライベートを尊重する文化が根付いています。
一方で、プライベートの時間を守るために、業務時間中はとても効率的に動くことが特徴ともいえるでしょう。時間を守り、計画的にタスクをこなしていきます。コミュニケーションも例外ではなく、正直な意見やフィードバックを積極的に表現することが好まれます。立場や年齢の上下関係があっても対等に話すことに慣れており、敬意を持って率直な意見を述べるのですが、日本の職場に慣れていると少し驚くかもしれません。オランダの歴史的にも、低地が多く治水のために人々が協力する必要があったため、話し合って折り合いをつける姿勢を重視するといわれています。普段は朗らかでフレンドリーな印象ですが、合意形成の場では合理的ともいえますね。
こうしたオランダの日常を見ると、ワークライフバランスやメンタルヘルスは制度だけでなく、組織文化や自他のプライベートを尊重し守ろうとする個人の意識によって、自然に育まれていることが分かります。日本でも、勤務時間や休暇の取り方、家族との時間を意識的に整える小さな取組みから、個人のワークライフバランスと組織の成果を両立させるヒントが得られそうですね。
【参考】
- OECD ”Mental Health and Work: Netherlands”
- World Economic Forum “The Dutch have the best work-life balance. Here’s why”
- Undutchables “A guide to understanding Dutch working culture”