本シリーズ「コンサルあるある」では、コンサルティング会社で働く方々に実体験エピソードを伺いながら、話の中に隠れている「あるある」も一緒に紹介します。
※プライバシー保護のため一部内容を変えております。
<第4回>
– 後輩の言動に戸惑ったときのお話を聞かせてください。
【ケース1】
お話を伺った方:Sさん(IT系コンサルティング会社/30代/女性)
後輩の言葉に対し、どのように反応すれば良いのか分からなかったときのことです。
当時私は、プロジェクト出資者がクライアントの海外本社で、プロジェクト現場がその日本支社というグローバルプロジェクトに関わっていました。
海外本社が打ち出した方針や進め方は、日本の商慣習や日本支社の企業風土に合うものとはいえず、現場のコンサルタントもクライアントも納得していませんでした。
クライアントの海外本社と何度も議論しましたが、日本支社の意向よりも海外本社の意向を優先した進め方は変えられなくて……。
そのとき後輩の一人から、「今の進め方は、日本のクライアントにとって最善のやり方とは思えないです。これがコンサルティングと言えるのでしょうか」と胸の内を話されたことがあります。
彼女の言葉はコンサルタントとしての率直な意見だと思いますし、最善の方法を模索する姿勢が見えて、頼もしく感じました。
同時に、皆が納得する落としどころを見出せずにいる自分の力不足を突きつけられたようで、歯がゆさを感じたことを覚えています。
– 決裁者の意向は無視できませんが、現場に合わない進め方を押し通しても、期待するほど効果が得られないことは目に見えていますよね。何より、現場の士気を高めることが難しいのではないでしょうか。「後輩の言葉が率直でもっともな意見だからこそ耳が痛い」ことは、複雑な事情が絡み合う現場で見られるあるあるですね。
【ケース2】
お話を伺った方:Fさん(総合系コンサルティング会社/40代/女性)
昨年の新入社員の一人に、とても優秀なAさんという後輩がいました。
彼は在学中に仕事に役立つ資格を取得していて、新卒研修や最初のプロジェクトで一目置かれるほどの専門知識を持ち合わせていました。
一方でその自信が悪い方向に働き、しばしば先輩を見下すような言動が見られました。
ある時、Aさんが先輩を馬鹿にするような態度で、「いい加減、〇〇の資格を取ったらどうですか」と発言し、険悪な雰囲気になりました。
現場のことを何も知らないのに先輩に対して失礼な物言いをする後輩を目の当たりにして、私は非常に戸惑いました。
最初は優秀で注目されていたAさんですが、そうした言動によって現在は「勉強はできるけれど仕事はできない人」という評価になってしまいました。
せっかく頭が良いのに相手への敬意や配慮が欠けているために評判を落とすのは、もったいないなと思います。
– コンサルタントの場合、基礎スキル習得やクライアントへのスキル証明を目的として、IT、会計、語学等の資格取得を会社から推奨されることは珍しくありません。ただ、仕事のパフォーマンスは資格の有無や知識量だけで決まるものではありませんよね。「個人として優秀でも周囲と良好な関係を築けなければ評価されにくい」ことは、チームで仕事をすることが基本のコンサルタントにとって、あるあるでしょう。
【ケース3】
お話を伺った方:Nさん(シンクタンク系コンサルティング会社/30代/男性)
プロモーションを逃した後輩が、「自分がプロモーションできなかったのはおかしいと思います。直近のプロジェクトではシニアマネージャーと同じ仕事をしていましたし!」と発言したときのことです。
当時彼女は若手のコンサルタントで、シニアマネージャーは何ランクも上の役職です。
あまりに想定外の発言に驚き、言葉を失いました。
シニアマネージャーの仕事を手伝っていたのだろうけれど……。
若手が上司の営業活動や管理業務を手伝うことは珍しくありませんが、「する」と「できる」は違います。
本当にものすごく優秀でシニアマネージャーレベルの仕事ができるのであれば、本人が言わなくても周囲からそのような評判が聞こえてくるものですし……。
ただ、彼女は本気で発言しているようだったので「そんなわけないでしょ」と冗談めかして返しても機嫌を損ねそうでした。
だからといって、「すごいね」なんて思ってもいないことは言えません。
結局「へぇ、そうなの」と一言返したのですが、その自信はどこからくるのか本当に不思議でした。
– 新卒でコンサルティング会社に入社してマネジメントになった方々から、「若手の頃は尖っていた」という話をよく伺います。新卒5年目あたりまでは、様々なプロジェクトを通して経験値が増え、任される仕事の幅がどんどん広がり、自分でも成長を感じやすいでしょう。もちろん環境や個人によりますが、気をつけないと自信過剰になりやすい時期かもしれませんね。「自己評価と他者評価に差があるメンバーの扱いに困る」ことは、後輩指導の中で起こりやすいあるあるです。