仕事とライフイベント⑦ 子どもの病気と職場復帰

本シリーズ「仕事とライフイベント」では、仕事とプライベートの両立など、悩みながら人生の選択をするビジネスパーソンからお話を伺い、毎回読み切り形式でお届けします。

※プライバシー保護のため一部内容を変えております。

 

<第7回>

お話を伺った方:Sさん(看護師/30代/女性)

テーマ:育児

 

– 印象に残っている出来事を教えてください。

 

出産の数日前、子どもに先天性の病気があることが分かりました。

出産後10ヶ月の入院を経て無事退院できましたが、家でも医療機器を身体に付けた状態で、1年を過ぎても復帰できる目処が立たなくて……。

元々、私は1年間の育児休業を取得して職場復帰をするつもりでした。

産休に入るときは長い休みに入ることが嬉しかったのですが、いざ復帰できないとなると、今度は復帰できないことへの悲しさを感じるようになりました。

 

– 当時のお気持ちと、どのように対応したか教えてください。

 

子どものそばにいたい気持ちは当然ありました。

それでも病気がある子どもの将来について考えたとき、様々な不安がある中で「せめて経済的な面だけでも不安要素を減らしたい」と思い、職場復帰を望んでいました。

ただ、復帰できない理由は子どもの病気なので、どうしようもないことも分かっている……。

そのような葛藤や焦り、どうにもならない悲しさを感じてしばらく過ごしていました。

けれども、あるとき「落ち込んでいても時間は止まることなく過ぎていく」と感じたことがあり、復帰できないなら自宅でできることをしよう、と考えるようになりました。

凝った料理を作ってみたり、丁寧に家の掃除をしたり。

子どもが生まれるまでは仕事漬けの毎日でしたが、「人生は仕事だけではない」と思えるようになりました。

仕事とはまったく異なる領域に興味を持つようになって、その勉強をすることも気分転換になりました。

置かれた状況で何とかできることを見つけてやってみたことで、何もしないよりは前向きな気持ちになれたと思います。

 

– 当時を振り返って、現在のお気持ちを教えてください。

 

現在も子どもの状況は変わらず、育児休業を延長して自宅で子どもの世話をしています。

子どもと向き合い、同時に自分とも向き合う時間を過ごしています。

「復帰できない!」と焦っていた頃より、現状を前向きに捉えられるようになりました。

もう少し早く気持ちを切り替えて、勉強や読書をするなど充実した時間を過ごせるようになれたら良かったのに、と思うときもありますが……。

今後、職場復帰したときには、今の気持ちが自分自身を強くしてくれるような気がします。

 

– 当時、周囲の方々はどのような反応でしたか。

 

職場復帰したいのにできなくて悩んでいたとき、上司や同僚が支えてくれました。

病気がある子どもの将来のために働きたいのに、自宅で子どもの世話をする人が必要だから、自分は復帰できない。

復帰後に参加予定だった病院経営に関するプロジェクトに参加できず、他の人に迷惑をかけている……。

予定通りに主任試験や他の資格試験を受けられないので、キャリアプランも練り直し……。

「あれもできない、これもできない」と焦っていた私に、「今の経験が後々仕事でも人生でも役に立つよ」「いつでも良いから戻ってきて」と言葉をかけてくれました。

精神的につらいときに話を聞いてくれて、とても感謝しています。

 

– 葛藤しながら自らの力で前向きな方向に進もうとする気概が伝わってきました。ありがとうございました。