本シリーズ「仕事とライフイベント」では、仕事とプライベートの両立など、悩みながら人生の選択をするビジネスパーソンからお話を伺い、毎回読み切り形式でお届けします。
※プライバシー保護のため一部内容を変えております。
<第11回>
お話を伺った方:Kさん(医療関連/40代/男性)
テーマ:育児
– 印象に残っている出来事を教えてください。
子どもが生まれてすぐ、先天性の疾患があることが分かりました。
妻が退院したあとも子どもは入院していましたが、私は昇格を控えた時期であったため、妻と相談して仕事に集中させてもらっていました。
仕事柄、我が子の疾患について知識があり、必要以上に不安になることはなかったと思います。
けれども、子どもの面会に通う妻の表情が日に日に暗くなっていき、子どもの治療経過が予想していたよりも良くないことから、私は育児休業を取得することにしました。
– 当時のお気持ちと、どのように対応したか教えてください。
以前、私が仕事でつらい思いをしたとき、妻に救われたことがありました。
「今度は私が妻を救わないといけない」と思いましたし、仕事は大切ですが、家族より大切なものはありません。
最初は「私は大丈夫だから仕事を続けてね」と言っていた妻ですが、コンロの火を消し忘れたり、お風呂の栓をせずにお湯を溜めようとしたり……。
見ていて心配になるほど、家事に支障が出ていました。
「子どものことは二人で見ていきたいから」と妻を説得し、育児休業を取得することに賛成してもらいました。
– 当時を振り返って、現在のお気持ちを教えてください。
育休期間は結局2ヶ月程度でしたが、取得して良かったです。
あのままでは常に家族のことが心配で頭から離れず、仕事が中途半端になっていたと思いますし、妻はもっとボロボロの状態になっていたかもしれません。
育休中は妻にできるだけ休息をとってもらいたかったので、私一人で子どもの面会に行っていました。
妻が思い詰めてしまわないように、医師や看護師から状況を聞いて、自分の知識と照らし合わせながら注意深く妻に伝えていたと思います。
そして、子供の容態が安定して退院できるようになった頃、私は復職しました。
– 当時、周囲の方々はどのような反応でしたか。
男性の育児休業は当時の職場であまり前例がなかったのですが、上司は「家族が一番だから」と快く送り出してくれました。
もちろん、昇格人事の前でしたから仕事上でマイナスの影響はあったと思います。
それでも、後悔はしていません。
私が育児休業を取得したことで、そのあと他の男性職員も取得しやすくなりましたし、相談されることも増えました。
自分が抜けたときの仕事の穴は同僚がフォローしてくれて、本当に感謝しています。
同僚の誰かが育児休業を取るときは、自分が積極的にフォローしたいと思っています。
– 一貫して家族を最も大切にする姿勢が印象的でした。ありがとうございました。