仕事とライフイベント⑭ ドイツでの単独出産

本シリーズ「仕事とライフイベント」では、仕事とプライベートの両立など、悩みながら人生の選択をするビジネスパーソンからお話を伺い、毎回読み切り形式でお届けします。

※プライバシー保護のため一部内容を変えております。

 

<第14回>

お話を伺った方:Mさん(小学校教師/30代/女性)

テーマ:妊娠・出産

 

– 印象に残っている出来事を教えてください。

 

夫の出張中に次男の出産が早まり、ひとりで出産を迎えたときのことです。

当時、私たち家族は夫の仕事の都合でドイツに住んでいて、出産予定日を3週間後に控えていました。

夫はちょうど半年に一度の日本出張の時期で、「まだ産まれないよね」と話しながら夫を見送ったのですが、数日後に陣痛がきてしまい……。

1歳の長男を夫の同僚のお宅に預けて、ひとりで出産することになりました。

 

– 当時のお気持ちと、どのように対応したか教えてください。

 

夫の出張期間は1週間。

「お腹の赤ちゃんと長男と一緒に、この1週間を乗り切らなくちゃ!」と意気込んでいた矢先の出来事でした。

陣痛が始まったのはお昼の時間帯で、長男が保育園にいるとき。

「長男のお迎えに行けない、どうしよう」と焦りながら、日本にいる夫に病院から電話をかけました。

出産には夫が立ち会う予定だったので、私ひとりで産むとなると調整しなくてはいけないことが山積みで、てんやわんやでしたね。

しかも電話中も陣痛の波がやってきて、「痛い!痛い!」と叫ばずにはいられません。

夫は出張中の仕事が立て込んでいたはずですが、同じドイツに駐在している同僚の奥様やベビーシッターに連絡して長男のお世話をお願いするなど、リモートでいろいろと調整してくれました。

段取りを夫にすべて任せられたことで出産に集中できて、だいぶ助かりました。

 

– 当時を振り返って、現在のお気持ちを教えてください。

 

陣痛がきたときに覚悟はしたものの、夫が留守中の出産に不安がなかったわけではありません。

でも、夫のリモート対応で長男を預ける手はずが整ったときは少し安心しました。

急なお願いにもかかわらず、私たち家族を助けてくださった方々には、感謝してもしきれません。

そうして生まれた次男は時々、「ママが寂しくないように一緒にいてあげるね」というようなことを言います。

もしかすると出産のときも、夫が不在で私が寂しがっていたので急いで出てきてくれたのかな、と思っています。

 

– 当時、周囲の方々はどのような反応でしたか。

 

次男の出産は、本当に多くの方々に支えていただきました。

1度しかお会いしたことがなかったのに、長男を預かってくださった夫の同僚の奥様方。

長男の送り迎えや育児を引き受けてくださったベビーシッターさん。

せっかくの休日に長男の相手をするために自宅まで来てくださった、夫の友人のご家族。

そして、長男は1歳にして初めて親と離れて、3日間のお泊りを経験しました。

産後、病院に連れてきてもらった長男は緊張しているようでしたが、とてもお兄ちゃんらしくなったように見えて、私は対面した瞬間に涙が堪えられませんでした。

 

– たくさんの方々に支えられてのご出産だったのですね。離れていても、ご夫婦で協力して大変な時間を乗り越えたことが伝わってきました。お兄ちゃんも頑張りましたね!