本シリーズ「仕事とライフイベント」では、仕事とプライベートの両立など、悩みながら人生の選択をするビジネスパーソンからお話を伺い、毎回読み切り形式でお届けします。
※プライバシー保護のため一部内容を変えております。
<第18回>
お話を伺った方:Hさん(営業アシスタント/30代/女性)
テーマ:転職
– 印象に残っている出来事を教えてください。
10年以上前に勤めていた会社で、パワハラ社長の下、社員同士で励まし合いながら過ごした期間のことです。
その社長はワンマンかつ強烈なキャラクターで、売上目標を達成できない営業スタッフに対して「給料泥棒」「生きている価値がない」など罵詈雑言で怒鳴りつけるような人でした。
月曜日の朝礼で社長が激昂し、午前中いっぱい社員全員が立ったまま説教を受けることもよくあって……。
社員50人ほどの規模でしたが、当然退職者も多く、1年間に30人採用しても25人辞めていくペースでした。
– 当時のお気持ちと、どのように対応したか教えてください。
私は事務職で社長との接点が少なかったため直接怒られることはなく、それほどのダメージはありませんでした。
でも、同僚が罵倒されプライドをズタズタにされるのを見ているのはつらかったです。
– 当時を振り返って、現在のお気持ちを教えてください。
昨今であれば、パワハラといわれて社会的に許されないような環境でした。
何かあったときの証拠にしようと社長の暴言を録音していた社員もいますし、今だったらネットに音声が流出していたでしょうね。
社員からの人望はありませんでしたが、仕事ができて業界内では評判の良い社長だったので、誰も注意できませんでした。
私にできたことは、攻撃のターゲットになった同僚の愚痴を聞くことくらいです。
今振り返っても、他にできることは思いつかないですね……。
– 当時、周囲の方々はどのような反応でしたか。
社長という共通の敵がいる社員の結束は固く、毎晩のように皆で飲みに行っていました。
今でも元同僚と集まると、「あれはひどかったよね」と社長の話になりますね。
私は2年半ほど勤めて転職しましたが、扱っていた商材や業務内容にはやりがいがあり、仕事自体は楽しかったです。
こちらから転職の話をする度に、引き留めるためにどんどん給与が上がっていって……。
ワンマン経営で社内規定がいい加減だったからでしょうけれど、それはちょっと面白かったですね。
今勤めている会社ではあり得ないことばかりで、ある意味では貴重な経験だったと思います。
つらくて大変なときを一緒に過ごした社員同士の絆は深まって、付き合いの長い友人になりましたし、あの会社で過ごした期間は私にとって悪い思い出ではないですよ。
– 年々コンプライアンスが厳しくなり、罵倒はもちろん執拗な叱責や人格を否定するような言葉は許容しない姿勢の企業が増えています。自分に向けられた心ない言葉は傷つきますが、周囲の人に向けられた言葉を聞くことも嫌な気持ちになりますよね。つらい気持ちを共有し、同僚の方々と鼓舞し合いながら頑張っていらっしゃった様子が目に浮かびます。お話を聞かせていただき、ありがとうございました。