海外在住者が語る異文化理解① アメリカ編Ⅰ

日本に住んでいても、人によって「当たり前のこと」はそれぞれ異なります。

相手が友人でも同僚でも、考え方や言動があまりに自分にとっての「当たり前」とか「常識の範囲」とかけ離れていると、カルチャーショックを受けることがありますよね。

自分の知識や経験からは予想だにしないことを見聞きして、唖然としたり、戸惑ったり、不安になったり……。

育った国とは別の国で生活することになれば、尚更です。

 

本シリーズ「海外在住者が語る異文化理解」では、海外で暮らす中で考え方や習慣など文化の違いを感じた経験をお持ちの方にお話を伺い、毎回読み切り形式でお届けします。

※プライバシー保護のため一部内容を変えております。

 

<第1回>

お話を伺った方:Wさん(大学生/20代/女性)

 

– 印象に残っている出来事を教えてください。

 

ニューヨークで大学生活を送っていた頃、周囲の人たちのペースがとにかく早いことに驚きました。

話すスピードや歩くスピードはもちろんのこと、決断も早い印象です。

私が出会った人たちは、皆さん、とにかく忙しいので「一分一秒も無駄にしないぞ!」という心構えで効率的に動いているように見えました。

最初に自分とのペースの違いを実感したのは、ニューヨークに来たばかりで、アパートを探していたときです。

内見を終えて、契約するか検討している15分の間に別の人に契約されてしまった、ということが繰り返しあって……。

ニューヨークの不動産は売り手市場という事情もあるとはいえ、相手に話を聞いてもらう工夫も必要なのか、と思いましたね。

 

– 当時のお気持ちと、どのように対応したか教えてください。

 

話を聞いてもらうことも簡単ではないと気づいてから、自分の意図を明確にすること、自分と関わるメリットを相手に提示することを心がけました。

アパート探しの件でいえば、外せない条件をリストアップしておき、それらにすべて当てはまり他に引っ掛かることがなければ即決する、というルールを自分に課しました。

あとは、こちらからも働きかけようと、家賃の数ヶ月分をまとめて前払いすることを提案したりもしましたね。

素早い行動と決断が求められることはプレッシャーも大きいですが、一方で、こちらが働きかけたことに対する反応もすぐにあって分かりやすかったんですよ。

おかげで、時間を無駄にすることがなくなった気がします。

 

– 当時を振り返って、現在のお気持ちを教えてください。

 

自分の意図を言葉で簡潔に説明することと、相手にgiveする姿勢が大切だということを実体験で学びましたね。

ニューヨークは周囲の声や一般的な慣習よりも、自分の意思が尊重される社会だと思います。

「お客様は神様」といった考えはないので、客の立場でも相手のニーズを汲み取って交渉しないと、なかなか物事が進みません。

ビジネスでは当たり前のことかもしれませんが、当時の自分はまだそのような認識が甘かったと思います。

 

– 当時、周囲の方々はどのような反応でしたか。

 

アパート探しを通じて、これまでとはコミュニケーションのスタイルを変える必要があることを肌で感じていた頃、親戚が仲介業者を紹介してくれました。

当時は学校が始まる前で、まだニューヨークの慌ただしい生活ぶりに慣れていなくて……。

サポートしてくれて、非常に助かりましたね。

アメリカは実力社会と言われますが、実際はツテもとても大きな力を持つんだな、と思う場面をこのときだけではなく何度か経験しました。

自分一人の力ではどうにもならないと思っても、積極的に協力を仰いだらスムーズに物事が進んだり、やり遂げられたり。

以前は、自分の考えや希望を言葉にすることを遠慮してしまうこともあったのですが、必要な場面ではしっかり主張するようになりました。

 

– これまでのご自身の生活やペースとの違いを体感しながら、現地で生活していくために逞しく行動し、変化していかれた様子が目に浮かびます。ありがとうございました。