本シリーズ「海外在住者のカウンセリング経験談」では、日本よりも心理カウンセリングが身近な欧米でのカウンセリング利用経験がある方にお話を伺い、毎回読み切り形式でお届けします。
※プライバシー保護のため一部内容を変えております。
<第3回>
お話を伺った方:Eさん 大学院生/20代/女性(カウンセリング利用時)
– カウンセリングを受けようと思った理由について、差し支えない範囲で教えてください。
北欧の大学院に留学していたのですが、留学生活の後半は毎日論文や研究に追われ、「もし卒業できなかったら」と考えると夜も眠れない日々が続きました。
どれだけ頑張っても成果が見えにくく、努力するエネルギーも底を尽きそうで、生きていくのに精一杯という状態で……。
そのとき、同じ研究室の友人が「英語でカウンセリングを受けられる学生向けのサービスがあるよ」と教えてくれたので、良い機会だと思い利用することにしました。
– 友人など周囲のカウンセリングに対する考え方はどのようなものでしたか。ご自身の印象や主観で構いません。
周りの留学生も私と同じように研究や海外生活でのストレスに頭を悩ませていて、「プロからの心理的なアドバイスは重要だよね」という考えでした。
教授陣からも「研究生活において精神状態は成果に大きく影響する」と言われていたので、カウンセリングを中心としたメンタルケアは、時間を割く価値があるものだと考えられていたと思います。
– カウンセリングを利用するにあたり、気になったことや障害になったことがあれば教えてください。
最初は、ヨーロッパでカウンセリングの需要がどれくらいあるのか知らなかったこともあり、カウンセリングを利用したことを周囲に知られないか気にしていました。
他にも、自分自身のメンタルヘルスについて客観視することは難しく、カウンセリングを受けるほど心にダメージを受けているのか判断に迷いました。
– カウンセラーの対応はいかがでしたか。
「External MotivationよりもInternal Motivationに目を向けて」と言われたことが、とても良かったです。
External Motivationとは外部要因のことで、論文執筆に取り組んでいた私の場合、締め切りや教授からの評価などです。
Internal Motivationとは自分に内在する要因のことで、「この論文が自分の人生にどのようにプラスになるか」「論文が終わったら何をしたいか」などが当てはまります。
私はそれまで自分の気持ちよりも、周りから言われたことなど外部要因ばかりにとらわれていました。
カウンセラーからのアドバイスは自分と向き合うきっかけになりましたし、話を聞いてもらってとても安心しました。
– 現在、心理カウンセリングに対して持っているイメージを教えてください。
日本では、心理カウンセリングは少し精神的に病んでいる人が受けるもの、というイメージがあるように思います。
これはアジアならではの考え方ではないでしょうか。
「強靭なメンタルでがむしゃらに働くこと」を美徳とする文化に起因しているのかもしれないですね。
そのせいか、心理カウンセリングは「社会の荒波に負けた人が行く場所」というような、ネガティブな印象を拭い切れていない方も多いように見えます。
一方でヨーロッパでは、「生き方は人それぞれ」「個人の選択や意思を尊重する」という価値観が根底にあるので、個人のメンタルヘルスに合わせたカウンセリングなどのケアに対しても寛容です。
ヨーロッパで学生生活や社会人生活を送り、今の私は後者の価値観に共感しますし、心理カウンセリングには個人的にポジティブな印象を持っています。
– カウンセリングルームはどのように選びますか。
身近な人のおすすめが一番ですね。
行く前から安心感があって、余計なことを考えずに済むからです。
自分が悩んでいることさえ周囲に悟られたくないときは、オンラインでアクセスできて予算に合うサービスを選びます。
オンラインカウンセリングの場合は、相談したい内容に応じてカウンセリングルームを変えることもあります。
海外での仕事や学業に関することは現地のカウンセラーに英語で相談しますし、日本に関することは日本人カウンセラーに相談したいです。
– 初めて会う人と話をする前は不安や緊張が生まれやすいですが、信頼する知人が「良かったよ」と教えてくれると少しハードルが下がりますよね。それはカウンセラーとの初回セッションでも同じでしょう。お話を聞かせていただき、ありがとうございました。